奇跡のバランスのアルテリオス
この記事を見ている人であれば、アルテリオスのことをある程度理解しているだろうが、一応説明をしておくならば、1987年の11月13日に日本物産より発売されたファミコンソフトである。
ジャンル的には一応RPGであるが、一応の理由は後述する。
宇宙を舞台としていて、その宇宙空間の名前こそがアルテリオスなのである。
このゲームはバランスの悪さばかりが着目されるが、実際にプレイをしてみると、大味でバランスが悪いなりにバランスが取れているある意味奇跡的な作品だったりする。
【破綻しない程度の絶妙なバランス調整】
確かにお世辞にもバランスが良いとは言えないものの、その中でゲームが破綻しない程度には成り立っているので、決して遊ぶことができないという程ではない。
今の感覚からすれば不親切な部分も多々あるので、厳しいと言えば厳しいのは事実ではあるが発売当時のことを考えれば、酷すぎるわけではなくゲームとして成立をしている。
このゲームで真っ先に取り上げられる部分が、ダメージの計算式だが、攻撃側の攻撃力-防御側の防御力=ダメージというものだ。
これによって自分が弱いときには相手に全くダメージが通らないのに、ちょっとでも強くなると大きくダメージが通るようになる。
実際にプレイをしてみなければ、バランスもクソもないように思えるかも知れないが、アルテリオスというゲームのシステムを考慮するとこれでもまぁまぁゲームが成り立ったりするのだ。
アルテリオスが他のゲームと違うユニークなところが、戦闘システムにあり通常時は普通のRPGなのだが、戦闘はシューティングになる。
似たようなシステムはファミコンのゾイドがある。
シューティングということは、プレーヤーの腕前が重視されるためノーダメージで敵を撃破することも可能だ。
どれだけレベル差があっても最低限ダメージ1だけは保証をされているので、理屈としてはレベル1でもラスボスを倒すことができるようになっている。(レベル1だとラスボスまで到達をすることはできないので、実際には無理)
つまり、強くなると戦闘が楽にはなるが、弱いままで先に進めないというわけではなく、一般的なRPGと違って弱いままでも先に進めるのがアルテリオスの良いところである。
その上で強くなれば楽に進めるし、弱ければ道中が厳しくなるので、単純なダメージ計算式によってゲームが崩壊するということはない。
大味な側面は否定しないが、強くなった実感を得やすいという利点もあり、現在地の敵を一掃できるようになったときのカタルシスは結構大きなものがあったりする。
動画で視聴をするときなどは大味すぎる部分が目についてしまうので、バランスが悪すぎると思うことだろうが、これは他のRPGであっても同じことだ。
ドラゴンクエストだって最初に倒すのに時間がかかっていたスライム相手でも、レベルが上がれば一撃で倒せるようになる。
強さがインフレするのは多くのRPGで一緒のことだ。ただ、アルテリオスに関してはそれが極端なので、目に付きやすいという話。
ちょっと力差が逆転するだけで、何十発とかかっていた相手が数発で倒せるようになってしまうのは、さすがにバランスが良いとは言えない。
しかし、上述したようにゲームのシステムがそのバランスの悪さを吸収して、悪いなりに遊べるゲームにしているのだ。
これは基本的なゲーム設計が優秀だから成り立っているわけで、名作になり得た可能性は十分にある。
良くも悪くも注目を浴びなければ、名作になり得た作品として一部のマニアで語られるゲームだっただろう。
【出来はやっぱりいまいち】
惜しいゲームであることは間違いないのだが、出来があまり良くないというのも正しい。
ダメージ計算の大雑把さは破綻していないだけで褒められるものではないし、それ以外の部分で雑な作りも多い。
時代を考慮して仕方がない部分もあるが、それでも不親切なところは多い。
目立つところでは買い物のテンポの悪さがあげられる。
アイテムを購入する時にまとめて購入をすることができないので、その都度精算をしてアイテムを選択するという流れになる。
当時のゲームとしては珍しいものではないが、このゲームは特に買い物の処理がもっさりしているため、面倒に感じてしまうことは多い。
一般的なRPGとは違い買い物が必須ではないので、利用しなければ良いと言うだけの話なのだが、アイテムの効果が強力なゲームだけに買い物のテンポの悪さは面白さを大きく損ねてしまう部分となっている。
固定的として登場するシェルの強襲も初見殺しで不親切である。
敵の行動は完全にパターンになっているので、覚えてしまえば完封をできるゲームなのだが、初見で強襲をかけられる敵は為す術もなくやられてしまうことが多い。
上記のダメージ計算式により、自分が弱いときには一撃でやられてしまうことも珍しくないだけに、シェルのように戦闘開始早々強襲をかけてくる敵は事前の知識がなければほぼゲームオーバーが確定する。
全体的に情報量が少なく、ストーリーが把握しにくいのも残念なところ。
これは容量不足もあるかも知れないし、世界観を重視したゲームっぽいのでそこまで問題ないとも考えられるが、新しい街を見つけて情報を収集する楽しみに欠けるのは惜しいと感じさせる部分ではある。
確かに悪い部分が目立つゲームではあるのだが、同じぐらいに光る部分も多く、戦闘のシステムや強くなったときのカタルシスに良質な音楽など、クソゲーとして切り捨てるには惜しい作品がこのアルテリオスといえよう。
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